「パパとママが居た時って、玲ちゃん、今はパパとママはどうしているの?」

 余り空気の読める方では無い浅倉は、無遠慮にそう聞いた。

「二人とも、今は天国に居るよ」

 那津子が浅倉を窘めた。

「やだ、みんな暗いよ。そんなに気を使わなくてもいいのに」

 明るく言う玲の言葉に、浅倉は救われたようにホッとした。

 玲の車椅子を乗せると、私はそのまま隣のシートに座った。

 那津子は何も言わず運転席に回り、必然的に浅倉が助手席へ座る事になった。

「さっきは、変な事聞いちゃってごめん」

「いいよ。ぼく、別に気にしていないから」

「あのおじさんは、昔からKYなところがあってね」

「ちょっとフーさん、玲ちゃんの前で変な事言わないで下さいよ」

 自然な笑い声が車の中に溢れた。こういう自然な笑い声を私は久しく耳にしていなかった気がする。

 笑いの中に、いつも冷めた感情を隠していた。周りもそれが感じられるのか、当たり障りの無い会話で時間をやり過ごす。そういう中にしか自分を置かなかった。

 だが、車の中はまるで違う空気で満ち溢れていた。たった一人の人間が加わるだけで、こうも違うものなのだろうか。