「俺の事、この子に話しているのか?」

 私は那津子に尋ねた。客の応対に忙しい彼女の代わりに、玲が幾分はしゃぐような言い方で答えた。

「風間さんの事、何でも知っているよ。なっちゃんは、いつもぼくに話してくれるからさ。旦那さんとしては失格だけど、ミュージシャンとしては、尊敬しているって」

 笑ってごまかすしかなかった。

「風間さんと、なっちゃんて、今流行の歳の差結婚なんでしょ?」

「おいおい、那津子はそんな事まで君に話しているのかい」

「うん。二十以上も年上なのに、あの人は子供みたいなんだからって言ってる」

「まいったな」

「ぼくとは、四十二歳の歳の差」

「え?」

「さっき、幾つって聞いたでしょ。子供じゃないからね。こう見えても女の子なんだから」

「という事は、十六歳?」

「あと三十七日で十七。だから、一瞬だけど歳の差が縮まるよ」

 まるで歌っている時とは別人の玲だった。

 彼女の話す声は、少年と少女の中間のように聞こえる。

 屈託の無い話し方は、玲が障がい者である事を忘れさせてくれた。