「おい、男同士でこんなに引っ付いて歩いてちゃ、そっちの気があると勘違いされるぜ」

「風間陽介、過去の女性遍歴はゲイであったからなのか!?みたいなスクープでもされましょうか」

「アホ、今更俺みたいな奴を狙うパパラッチなんて居ないよ」

「なら心配する必要無し。ほら、こっちですよ」

 浅倉に案内されるままに向った場所は、横浜駅高島屋口を出た橋の近くであった。

 遠目にも那津子の姿が判った。

 長い髪を後ろで束ね、細身の身体が一際細く見えるようなスリムのジーンズを穿いていた。

 ノースリーブのTシャツから出ている腕は、暫く見ない間に随分と小麦色に日焼けしていた。

 彼女のすぐ傍に、車椅子に乗った少年が居た。

 そう、私はこの時、その子を少年だと思い込んでいた。

 髪を普通の男の子のように短く刈り上げていたせいもあったからだが、遠目から見た印象が、何と無く少年が持つ儚げな脆さを感じさせたからでもあった。

 その子の肌はやけに白く、それもあったのかも知れない。ただ、その時は漠然と、車椅子の生活だと余り外を出歩かないから、陽にも焼けないのだろうとしか思っていなかった。

 那津子の方でもこちらに気付き、手を挙げて私達を招き寄せた。