薔薇の花を何本にしようか迷っていると、店員が、

「花の量によっても花言葉の意味が違って来るんですよ」

 と言った。

 私は、贈りたい相手への想いをその店員にそっと伝えた。

 私のすぐ後ろで花を選んでいた女性に聞かれるのが恥ずかしかったからだ。

 察してくれた店員は、

「贈られる方が羨ましいですね」

 と、私にだけ聞こえる声で言った。

 包んで貰った赤い薔薇の花束を受け取ると、私はもう一つ頼むと言った。

「この住所へ郵送して欲しいんだ」

「では、こちらへご住所と宛名を書いて下さい。ポストカードもお付けしますか?」

「ええ」

 差し出されたポストカードに、

『今度はアポロシアターで歌おうぜ。その前に、武道館かな』

 と書いた。

 住所は愛光園。

 選んだ花は……紅色のゼラニウム。

 一夜漬けで覚えたにしては、上出来かな……。




    END