レイのピアノが、深海魚のドラムが、心也のベースが、そして、私のギターが一つになった。


 ♪ぼくの ほんとを だれも だれも だれも 知ろうとしない♪


 私と心也のコーラスが、レイの伸びやかな高音に重なる。

 彼女のピアノが激しくなった。 


 ♪ねえ この声 この思い 君に 届いているのなら
 
 教えてほしいことがある

 空の色 雲の形 花の名前

 そして君のことを それからぼくのことを 飾ることなく話してよ♪


 初めて耳にするコード進行。

 譜面がなんだ、今この時に、生まれて来た音が、それがお前の歌なんだ。

 レイの身体に何かが乗り移ったかのか。


 ♪ねえ この声 この思い 君に届いているのなら 教えてほしいことがある♪


 ストレートに、なんの迷いもなく彼女の声が響く。

 歌の中に笑いがあった。

 哀しみも、そして喜びと優しさが。

 僅かな時間の中に、彼女は全ての想いを吐き出していた。

 誰かに伝えようとかではなく、自分自身に伝える為に、彼女は歌っていた。


 ♪そして君のことを それからぼくのことを 飾ることなく話してよ

 それが それだけが ぼくのほしい優しさだから ほんとにほしいものだから♪


 エンディング……余韻の中、フェードアウトして行く音に乗せ、


 ♪deep heart もう迷わない……♪


 と即興で歌い、静かにピアノから手を離した。