「ようすけ……」

「まだ何か言いたい事があるのか?」

「これだけ、これだけは聞いて……」

 レイの手が私の手をきつく握り締めた。

「お願いか?」

「大きい声で言えないから……恥ずかしいから、耳を近付けて」

 私が彼女の口元に耳を向けようとした時、レイの顔が急に動いた。

 唇に柔らかい感触が、一瞬だけ走った。

「えへへへ。ファーストキスいただき!」

「お前なあ……」

「なっちゃんにようすけを返して上げる。ぼくの初恋は、お、わ、り」

「キスの味、どんなだった?」

「期待して損した。タバコとお酒の味。最悪だったぞ。ようすけはどんな味がした?」

「お転婆娘の味がした」

「ほんと、乙女心の判んない人。そんなんじゃ、なっちゃんが逃げちゃうぞ」

「だな」

 この子には、本当にいろんな事を学ばされる。やっぱりレイは、

 とんでもないやつだ……。