「まあ、説得力が無いのは仕方ないさ。俺は教師じゃない。最後にこれだけは言って置きたいんだ」

「なあに?」

「お前の事を障がい者としてしか見ていなかった者が、遥かに自分達よりも素晴らしいものを持っていると認めた時、みんな、どんな気持ちになると思う?」

「どんなって……よく判らない」

「尊敬と感動さ」

「尊敬と、感動……」

「ああ。それは、言葉じゃ説明出来ない感情なんだ。魂を揺さぶられ、訳も判らずに涙が溢れてくるんだ。みんな、おまえの歌を聴いて、そういう気持ちになる。そして、それ以上にお前から勇気を貰ってるんだ。そうさせてくれる人間なんだぜ、香坂玲という人間は」

「それが特別なものってこと?」

「レイの場合はな。お前が言う普通の人間でも、そういうものは持っている。ただ、表現の仕方が違うのさ。ある人間は、過ごした人生そのもので人を感動させ、ある人間は本を書いたり、また別な人間は映画やドラマで演じる事で、お前と同じ感動を与えてくれるのさ。みんな、一緒なんだ」

「ようすけも、たまにはいいこと言うんだね」

「たまにはな」

「ぼくね、テレビとかライブとかで、特別な人間だみたいな扱いをされてて、それで、違うよって言いたかったんだ。特別じゃなくてもいい。みんなと同じように歩いたり、景色を眺めたり、恋もしたり……。
 ねえ、なっちゃんと仲直り、出来るかな?」

 私は、彼女の頬に手をやり、軽く二度三度と叩いた。