「レイちゃんがメインとはいえ、ロンリーハーツはケツの復活の二文字で済まされちゃってんのが、ちょっとしゃくですね」
「しょうがないさ。俺達だけじゃ、寄って来るのはゲートボールがお似合いの年寄りばかりだからな」
「何言ってんのさ。今時ゲートボールもしやしないわよ」
いつもの深海魚でいつもの顔触れが、前夜に放送された自分達の事を酒のつまみにしていた。
「それはそうとさ、ちょっと気になったんだけど、このところのレイちゃん、イメージが変わったわよね」
深海魚の恋女房が、自分の旦那に同意を求めていた。
「そうか?」
「なんかさあ、前に比べてこう、ぎすぎすして来たっていうか……」
「お前の思い過ごしじゃないのか?」
「そうかしら……ねえフーさん、どう思う?」
深海魚の女房に尋ねられて、私は言葉に詰まった。
私も同じような印象をこのところ抱いていたからだ。
一昨日のライブでの事だった。熱狂した観客の歓声とスピーカーからの大音量とが、狭いライブハウスの中で共鳴し、レイは自分の声が聴き取れなくなってしまった。そのせいか、途中で何度かピアノを弾くのを止めたり、歌の出だしを間違えたりした。
それで苛立ちが隠せなくなったのだろう。彼女にしては珍しく、周囲の者に不満を撒き散らかした。
特にその煽りを食った形になったのは、那津子だった。



