「用件は何だ?まさか今夜は寂しいから、横で寝させてくれって訳じゃないだろ?」
「もしそうだったら?」
「あいにくとベッドはシングルなんだ。並んで寝るには狭い。まあ、重なるなら寝れない事もない」
「昔に比べて太っちゃったから、貴方を押し潰してもいけないわ。今夜は遠慮しとく」
「じゃあ、ダイエットが成功したらだな」
「そうね、いつになるか判らないけど……それよりも、肝心な話をしないと」
「レイの事だろ?」
「うん。貴方、気付かなかった?」
「彼女の事でか?何も、いつもと変わらなかったと思うが」
「あの子、最近施設で浮き始めているの」
「……?」
「テレビに出て、雑誌とかの取材があったり、毎週末はライブ。それに、今までと同じように日曜日とか近くの教会や市民会館とかで、演奏会をやっているでしょ。周りがあの子の事を特別な存在って意識し始めたの。それでレイちゃんの方も、自分は他の子達とは違うって思い始めている感じなのよね」
「それで浮いているっていうのかい?」
「元々、天真爛漫で無邪気な所があって、それがみんなから好かれていた所でもあったんだけど、ここ最近はその無邪気さが少し違ったものになって来て……」
「具体的には?」
「怒りっぽくなって来た、とでも言うのかな……前はどちらかと言うと、自分を主張しない方だったの。自分は我慢しちゃう、そんな感じだったの」
「自己主張するようになっただけなら、別に問題無いんじゃないか?」
「それだけならね……」
言葉を濁した那津子の表情は曇っていた。



