「前も言ったよ。ぼくは構わない」
「この話を受けると、現実にお前は世間から好奇の目で見られるぞ。確かにそれがきっかけになって、レイという素晴らしいアーティストを知る事にはなる。だがな、レイが一番嫌っている、普通じゃない人間として最初は見られるんだ」
「……」
「同情を誰よりも嫌っているのは、お前自身じゃないか。普通の女の子としては、誰も見てはくれない。今だから正直に言うが、この俺でさえ最初はそう思った位だ」
「今は?」
「勿論、今は違うよ。レイの歌に惹かれ、レイの音楽に対する純粋さに惹かれ、才能に感動して、レイという人間を心から尊敬している」
「ようすけと同じように、他の人達は見てくれないの?」
「それは難しい質問だ。今までレイの音楽に触れた人達は、みんな俺と同じようにお前を一人の人間として認め、尊敬している。ハルさんにしても、サムタイムでレイの歌を聴いたお客達もね。けれど、世の中にはいろんな考え方を持った人が居る。俺達の事を単にレイを利用して、一儲けしようとしている人間だと思っている者だっているんだ」
実際にこういった話は、ぼちぼち私達の耳に入って来ていた。特に業界関係者から、そういった声が聞こえ始めていた。
奴らは障がい者を利用してまで再デビューしようとしている。そうまでして過去の栄光をもう一度夢見たいのか、と。
私達はいい。長い人生の中で、もっと汚辱に塗れた言葉と視線を貰った事があるから。だがレイはまだまっさらなキャンパスだ。誰の手であろうが、穢させる訳にはいかない。
「ぼくは平気だよ。みんなと一緒に歌えればいいだけだから」
この子の思っているように、果たして世間は、そしてマスコミは純粋に受け止めてくれるのだろうか。



