その時、人のいない切符売り場に携帯の着信音が響いた。
「こんな時に誰だよ」
舌打ち混じりに呟き携帯を開く。
原だった。
終電を逃した俺に光が射す。
「なあ、原。ドライブ付き合ってやってもいいぞ」
「マジで? っしゃ、助かったぁ」
電話はやっぱりドライブの再勧誘で、俺はこれを利用するしかないと考えた。
「その代わり、行き先は俺が決める」
そして、30分後。
「ったくよぉ。どうして俺らがお前の痴話ゲンカに付き合わなきゃいけないわけ?」
「文句言うな。その代わりイイトコ連れてってやるから」
「いいじゃない。歩君の彼女も見れるし~」
俺は原の車で、地元に向かって高速を猛スピードで通過中。
助手席にはサオリが座っており、不満を垂れる運転手・原を激励してくれている。
正直こいつに助けてもらうのは不本意だが、背に腹は代えられない。
後々どう言われようが、今は恵里に会うことが最優先だ。