自分のした行動が信じられなくて、市川との今までの出来事が頭ん中をぐるぐる回る。


なんで、さっきみたいな行動に繋がったのか……。


「……」


思い起こしてみれば、思い当たる節はいくつもあるような気がした。

……今までの俺の行動のすべてが、市川への気持ちを表してる気がした。


初めて頬を腫らしてるのを見た時、何かを隠してる市川が気になった。

彼氏の暴力に気付いた時、それでも好きだって言い張る市川を、あいつの前から連れ去りたくなった。

自分と少しだけ似た境遇だって事を知った時、必死で耐えてる市川を助け出したくなった。


頑張って笑ってる市川を……、守りたかった。

彼氏の暴力からも、寂しさからも守って、俺が笑わせてやりたくて。


……それでも。

教師と生徒だっていう事を、無意識に自分に言い聞かせて気付かないようにさせて……


理性が勝手にそれを止めてた。



その理性が初めて飛んだのは、市川が彼氏に殴られて泣き崩れた夜。

……無意識に、身体が市川を抱き締めてた。


『見てられねぇよ』

そんな言葉が勝手に口をついてた。


わざと見ないようにしてた気持ちが、俺ん中を支配してた。


それからは市川の事が気になって仕方なくて。

僅かな変化でも気付くようになってた。


そして、今日―――……



集会で市川の頬の腫れに気付いて。

……許されないって思いながらも、走り出した自分を止められなかった。




体育館から連れ出す事も

数学学習室に連れ込んだ事も

キスした事も……。


止められなかった―――……