「ねー、どこに連れてくつもりよ」

 バス停に向かっているらしいが、未だに行き先は聞いていない。

「行きゃわかるって」

 往生際の悪いやつめ。

 私が普段帰宅する際に利用する方角の停留所でバスを待つ。

 歩の場合、普段は登校する際に使う停留所だ。

 バスは私たちが到着してすぐに来た。

 ICカードを使ってバスに乗り込み、車内中ほどの座席に二人で座る。

 行き先を告げられていないことに納得のいかない私は、彼と会話をするでもなく、ただ見慣れない車窓からの風景を楽しんだ。

 進むごとに辺りは暗くなっていって、そろそろ日の入り直前だ。

「次は、南高校前。南高校前です。お降りの方は降車ボタンでお知らせください」

 アナウンスが流れ、歩がボタンを押した。

「え? 南高に行くの?」

「うーん。大雑把に言えば、そう」

「意味わかんない……」

 何よ、大雑把って。