二口目のハンバーグを切りながら、私は意思表明をした。

「あたし、働こうと思うの」

 それを聞いた彼は、慌ててガリガリと口の中で氷を砕き始めた。

「なんで?」

 社会復帰をしようというのに、悲しそうな顔をするのは筋違いじゃないだろうか。

 働く理由なんていくらでもあるじゃない。

「いつまでもニートじゃいけないと思って」

 この間テレビを見ながら覚えた言葉、ニート。

 Not currently engaged in Employment, Education or Training

「教育を受けておらず、労働をしておらず、職業訓練もしていない」

 私のことだなと思ったら、自然と頭に入ってきた。

 英語を覚えていることに、少し感動。

「良いんだよ、無理しなくて。俺の稼ぎじゃ不安?」

「そういうことじゃないよ」

 勝彦に十分な稼ぎがあるのは生活を見ててわかるし、不安を感じることもない。

「欲しいものがあるなら俺に言ってね」

 俺に、を強調して、彼は慎重に肉を口に入れた。