そのあとは早かった。 獣のような俊敏さで赤髪男に近付いた英治は、抵抗する間もなく男を投げ飛ばした。 すでに怯んでいた赤髪男はそれだけで戦意喪失したみたいで、仲間を引き連れてスタコラサッサと逃げていった。 コンクリートの冷たい建物の中には、あたしと英治だけが残される。 「……」 「……」 しばらくの沈黙。 何を言えばいいのか分からない。 こんな目に合った原因は英治で。 でも助けてくれたのも英治。