凛として歩く三村を見えなくなるまで見送って、俺は携帯を取り出した。
気が重いが、けじめはつけなければならない。
簡単な操作をして、耳に当てる。
コール音は一回目で止まった。
痛いほどの緊張が体中を締め付ける。
「もしもし、久美?」
「うん。仕事、終わったの?」
穏やかな声を聞くと、胸が痛い。
この後の反応を考えると、迷ってしまう。
しかし覚悟は決めた。
「電話で申し訳ないんだけど、話がある」
「え? 何よ、改まって」
その声の後ろで、バラエティ番組の笑い声が聞こえる。
俺は一つ深呼吸をして、壁に寄りかかった。
「別れて欲しい」
「……は? 何、それ。どういうこと? 何かあったの? 酔っ払ってるの?」
続けられた久美の質問が痛々しく聞こえた。



