ペアリングを外して


 もう、ルールなんて関係ない。

 怯えるように俺を見る三村に、俺ははっきり思いを伝えた。

「お互いの相手と別れて、俺と一緒に暮らそう」

 三村の目に、涙が溢れた。

 瞬きと同時に目の真ん中から漏れる。

 その涙の理由は何だろう。

 わからない分不安になって、座ったまま三村を抱きしめた。

「小出……、スーツに化粧がついちゃう……」

「そんなのかまわねーよ」

 気にするところが違うだろ。

 いくらスーツが汚れたって、泣いている三村を眺めてなんていられない。

 グスッと鼻をすする音が何回か聞こえて、彼女は「もう大丈夫」と俺から離れた。

 バッグからティッシュを取り出し、簡単に涙を拭う。

 再びこちらを向いた時を見計らって、長い長いキスをした。

 少しだけしょっぱい味がした。

「本気で言ってる?」

「嘘でこんなこと言えるかよ」

「そうだよね」