そこで湯本の粋な一言。

 今思えばこの一言が運命を左右したともいえる。

「小出君、菜月ちゃんを送ってあげて」

 中学当時の俺の気持ちを知っている彼女は、おそらく気を利かせてくれたんだと思う。

「あ、ああ。わかった」

 快諾し、みんなは湯本に連れられてカラオケへ。

 みんなと別れの挨拶を交わした三村と、二人きりになった。

 何か話さなきゃ。

「彼氏、厳しいの?」

 三村はニコッと笑い、そのままクスクス笑い始めた。

「え?」

「あ、ごめん。帰らなきゃって、嘘なの。終電までに帰れば、彼には何も言われないよ」

 嘘?

 どうしてそんな嘘をついたんだ?

「あー、そうなんだ」

 的を射ていない俺は、とりあえず納得したふりをする。

 三村は笑って、

「ちょっと、歩こうか」

 と歩きだした。