ペアリングを外して


「おい、久美……」

「何もしてないなら謝らないで! あたしが我慢すればいいんだもん」

 ごめんなさい浮気しました、なんて言えるわけがない。

 何もしていないというスタンスを守るため、俺は謝ることすらできなくなった。

「我慢なんてする必要ないだろ」

「我慢しなきゃ怒るでしょ?」

 前例があるだけに、どう言い返していいかわからない。

 久美が求めているのは、俺が久美だけを見ているという証拠。

 その証拠を掴んで、安心したいのだろう。

「俺はどうしてやればいいの? どうしてやれば信用してくれる?」

 究極の証拠品、携帯電話だって全て見せたというのに。

「……じゃあ、湯本って人と会わせて」

「は? 湯本?」

「誕生日にメール来た人」

「ああ、そういうこと」

 久美はまだ湯本のことを疑っていたのか。

 それならそうと言ってくれれば、もっと早く解決できたものを。