ペアリングを外して


 怒っているような声色。

 緊張する。

「あ、俺」

「うん」

「元気?」

「うん」

 淡白な返事を聞くと無性に悲しい気持ちになった。

 久美は俺に素っ気なくなったと言っていたが、俺もこんな調子だったのだろうか。

「あのさ、ごめん」

「何が?」

「言い過ぎた」

「何を?」

 こういう時、女って怖い。

 テレビでよく恐妻家の特集なんかをやっているが、もしかしたら俺もその類なのではないかと思うくらい。

「だから……色々。強く言い過ぎた」

「別に幸雄が悪いわけじゃないじゃん。あたしが疑ってるのが悪いんでしょう?」

「でも……」

「何か悪いことしたの? したから謝ってるの?」

 下手に言い返せない。

 久美は電話越しに、再び泣き始めてしまった。