「彼女とケンカしたからかな」
「あらら、そうなんだ」
その声も明るくて、情けない俺をバカにするかのよう。
「で? どうした?」
「えっとね、全然しょうもないことなんだけど……」
湯本の話は、本当にしょうもない話題だった。
同じく同級生の山口が、最近ボッタクリの被害に遭ったらしい。
他人の情けない話に、不幸な顔をしていた俺も笑えた。
何日か経つと久美に対する怒りも治まり、だんだん申し訳ない気持ちが募ってくる。
数日の間、俺から連絡することはなかったし、久美からも連絡が来ることもなかった。
申し訳ない気持ちというのはどうも気持ちが悪い。
ケンカしてから四日後、俺はやっと久美に謝る気になった。
久美の名前を確認し、通話ボタンを押す。
随分久々な気がした。
コールが続く。
いつもは大体2コール目で出るのに、今日は5コール目くらいで繋がった。
「もしもし」



