自宅に到着して、音のない部屋に明かりを点す。
洗面台で顔と手を洗い、鏡に映る自分の顔を見た。
光の差し加減はいつもと変わらないのに、酷く不幸な顔をしているように見えた。
洗濯機にかけていたタオルでゴシゴシ顔を拭い、ため息をつく。
洗面台には独身男の一人暮らしには似合わないメイク落しや化粧水。
ヘアクリップのようなものも置いてある。
無論全て久美のものだ。
ここ二年半で、俺の生活には久美の存在がかなり浸透していた。
それが心地よかった。
全て俺が悪いのに、久美を悪者のように仕立て上げている自分。
テレビで見る罪人の顔と重なった。
そんなやつらと同等な気がして身震いした。
タオルを戻したところで携帯が震えだす。
内心怯えながら画面を確認すると、久美でも三村でもなく、湯本だった。
「もしもし」
「あれ? どうしたの? 声暗いね」
お前がいつも明るすぎるんだよ。



