みんながにやけているのには理由がある。

 かれこれ十一年前、俺たちが中学二年生だった頃。

 俺と三村は両思いだという噂が学年中に広まっていたのだ。

 どうやらあながち嘘ではなかったらしいが、ガキ大将的存在だった俺と姉御的存在だった彼女は毎日ケンカばかりしていて、お互い素直になれぬまま疎遠になってしまった。

「ふーん。そうなんだ」

 それだけかよ。

 もっと俺に興味を示して欲しかった。

 話は盛り上がり、店を出た頃にはもう十時になろうとしていた。

「二次会行こうよ」

「カラオケ?」

「中学時代の歌限定な」

「何よそれ~?」

 一行はカラオケボックスを探す。

 その時、

「あ、ごめん。あたし帰らないと」

 三村の一言に、一同が一斉に「え~」とブーイング。

 同棲している彼氏に心配をかけるからだろうか。