暫く携帯をいじり、満足したのかパチンと閉じる音がした。
「何もなかっただろ?」
「うん。てことは……」
まだ何かあるのか?
「あたしが飽きられたってこと……?」
泣きそうな声でそう言うものだから、俺は慌てて久美を抱きしめる。
「そんなことないよ」
と、根拠のない言葉を吐きながら頭を撫でた。
俺はあまり器用な人間ではないのだろうか。
結局久美を泣かせてしまった。
「嘘だぁ。飽きたんだぁ」
やや不満に思っていることはあっても、久美に飽きたということはない。
うん、絶対にない。
ただ三村は別物で、別格。
だからといってこれ以上久美を不安にされるわけにもいかない。
欲に負けて三村と頻繁に会うようなことは避けよう。
なんて、結局三村を捨てれない俺は、最低な男に間違いはない。



