ペアリングを外して


 その時の声色、表情、仕草。

 一言で言えば、幸せそう。

 身が燃えるほどの嫉妬に、鳥肌が立った。

 電話を切った三村を、思いっきり自分の体に押し付けた。

 俺の胸に収まった彼女の背中は、少しだけ汗ばんでしっとりしている。

「小出、苦しいよ」

 笑いながらこちらへ体を向けた三村。

 苦しい?

 俺に愛されるのは、苦しい?

 やっぱり一番はあいつなの?

 鈍く痛む心は自分だけを思って欲しいと願う。

 それがルール違反だとはわかっていながら。

「どうしたの?」

 目の前にある顔が、俺の気なんて知らずに聞いてくる。

「いや、たぶん嫉妬」

 俺の答えに、戸惑ってくれれば良かったのに。

 甘える笑顔を見せるから勘違いするんだ。

 三村は「A」よりも俺が好きなのではないか、と。