ペアリングを外して


「中学の同級生ねぇ」

 三村の長い髪をいじりながら呟くと、体がこちらに向いた。

 つまんでいる毛先には枝毛一本ない。

「嘘ついてないあたりが誠実でしょ?」

 そのまま毛先で彼女の鼻をくすぐってやった。

「どこがだよっ」

 じゃれ合うこの時間が幸せだ。

 本気にならないというルールがある手前、口には出さないが、気持ちが三村に傾いている気がする。

 もし言ってしまえば、きっともう会ってもらえない。

 不倫のような関係ではあるが、リスクを負って名実共に三村を手に入れるより、失うことを恐れている。

 そのくせに、久美を失うのも怖い。

 久美と別れて三村をも失ったら、俺はきっとボロボロになる。

 カッコ悪いし、情けないし、ただ酷いだけの悪い男になる。

 それがどうしても嫌なのは、きっと男のプライドとかいうヤツだ。

 ズルいし、セコいし、最低だとは思う。

 しかし俺なりに一生懸命なのだ。