鼓動の高鳴りに耐えて、コール音を聞く。

 暫く鳴り続けて、音が止まった。

「……ガッチャン、きゃぁっ! ゴトゴト……」

 え?

 ナニゴト?

「あ、ごめんごめん。携帯落としちゃって」

 やっと言葉が聞こえてきた。

 俺の緊張は、間の抜けた声に一気におさまった。

「お前……何やってんの?」

 できれば、すんなり声を聞かせて欲しかった。

 最初の音を聞いたときは、死んだかと思ったくらいだ。

「夜ご飯の準備。慌てて携帯取り出したら、落としちゃって」

 ああ、そういうこと。

 三村も料理なんてするのか。

 そして相手は、三村の飯を毎日食えるのか……。

「作り終えてからかけ直してくれれば良かったんですけど」

「あは、そうだよね。でも、せっかくかけてきてくれたのに、もったいないじゃん」