電車に乗っている間、俺はメール作成画面を開いては閉じ、開いては閉じ……と、何とも男らしくない行動を繰り返した。

　結局メールは作成しないまま降車。

　駅前で適当に飯を食って帰宅した。

　静かな部屋。

　時刻は午後八時。

　再び携帯を開くと、画面は三村の情報画面のままだった。

「電話くらい……」

　と、自分を勇気付け、通話ボタンを押してみる。

　プップップップ……ピッ

　ダメだ。

　勇気が出ない。

　というより、話すネタもない。

　あの夜のことを持ち出すのは恥ずかしいし、この時間だと三村の相手もいるかもしれないし。

　言い訳をして携帯を閉じると、ヘタレている自分が急にカッコ悪くなった。

「あぁー、もう」

　モヤモヤする。

　情けない。

　自分の感情の移り変わりに戸惑いながら、今度こそ、と意地になって通話ボタンを押した……。