「ちょー気持ちよかった。ぽっかぽかだね」
嬉しそうに土産コーナーに走っていく久美を見ると安心した。
「うん。夏に温泉も悪くないな」
久美がどうでも良くなったわけではない。
彼女は彼女で大切だ。
このまま何にも気付かなければいい。
俺のやましい気持ちなんて、きっとそのうち消える。
そう思っていたのに。
翌週の水曜日、仕事上がり。
帰りの電車で携帯を開くと、湯本からメールが入っていた。
〈おつかれー。さっき菜月ちゃんと会って、あんたと話せてよかったって言ってたよ〉
メールには、いやらしい笑みを見せる絵文字が使われていた。
湯本の方が俺より運命的に三村と会っているような気がして、小さく嫉妬する。
アホだろ、俺。
湯本は女だというのに。



