そうしながらいつの間にか三村を好きになっていた俺。

 気持ちに気が付いた頃、学年では俺たちが両思いだという噂が流れ始めた。

 嬉しい気持ちが半分を占める一方、周りに知られる恥ずかしさがもう半分。

 ガキだった俺は恥ずかしさゆえ、気持ちを押さえ込んで噂を消すほうに専念した。

 結果、三年に上がる前には疎遠になってしまったのだ。

 そして、進展はないまま卒業。



「なんか、もったいなかったね」

 二十五歳になった三村が髪をかき上げる。

 その手の薬指に、シルバーのリングが光った。

「そうだな。俺、すげー好きだったもん」

「ほんと? 嬉しい」

 十年越しの告白。

 中学時代にこう言えていれば、俺たちの関係も変わっていただろうか。

 思いが一つだった嬉しさを噛みしめていると、右腕に何かが触れた。

 一歩俺に近づいた三村の腕だった。

 至近距離から、20センチ高いところにある俺の顔を見上げている。