「37点」

 冷たく言い放たれた、模擬試験の点数。

 歩の目と眉が釣り上がっている。

「お前な、俺と勉強してきた三ヶ月を棒に振る気か?」

「決してそんなわけでは……」

「何もかも忘れんじゃねーか」

 ちくしょう、数学め。

 何でこんなに難しいんだ。

 ビシビシ指導され、記憶を呼び戻していく。

 数学の回答と共に、歩への気持ちの変化まで蘇っていった。

 これをやってた時は、こいつのこと大嫌いだったっけ。

 でも、なんとなく気になり始めたんだよな。

 これをやった時は、悠晴とサボったんだっけ。

 もう随分昔のように感じてしまう。

 12月から急に歩が心の中に入り込んできた。

 もう十年以上の付き合いになるのに、今になってこんなに自分を左右する存在になるとは思わなかった。