歩はまた憎たらしく笑って、意地悪な表情になった。

 その余裕がムカつくんだよ。

「ホントだって」

「その言い方が嘘っぽいの」

 ヘラヘラ笑って言わないでよ。

 覚えてない私にとっては、そして片思いの私にとっては……すごく重大なことなんだから。

「覚えてないなら嘘でも本当でも一緒だろ? なかったことにしとけば?」

 なかったことにしたくないから、本当がどうか知りたいのに。

 歩にとっては単なる酔っ払いとのハプニングでしかないんだ……。

 わかってたけれど、苦しい。

「嫌よ。気ぃ悪い」

「はは、だから本当だって言ってるじゃん。それを信じとけって。じゃあな」

 面白そうな顔のまま、歩は行ってしまった。

 響子さんのもとへ。