『ボクは…〝夢〟を、見てみたい』

「…夢?」


『とても素敵なものだって、聞いたんだ。夢は脳みそが見せているって。ボクは眠らないから分からなかったけれど…』

「…便利だと思うけどね。寝なくてもいいなんて」


言ったリオに、かかしがくすりと笑った気がした。
やはりその表情は変わらないので実際どうなのかは、分からないけど。


『その〝脳みそ〟は、キラキラしてて綺麗だね。とても素敵な夢が見れそうだ』


穏やかな口調でかかしがそう呟いたその瞬間、リオの持っていた〝脳みそ〟がふわりと浮き上がり、かかしのもとへと吸い寄せられる。

リオもうららも驚いて目を見開いたまま、ただ呆然とその光景を眺めた。

やがてそれは淡い光を放ち、かかしの頭へと、吸い込まれるように消えていった。

そしてかかしの手足を縛っていた縄がゆるりとほどけ、服に差し込まれていた竿が抜かれた。
自由になったかかしが、ゆっくりとリオ達の前へと降り立った。


『──やぁ、リオ。驚いたな、君も魔法使いなのかい?』

「…まさか。ここが魔法の国なんでしょ?」


『ふふ、もしかしたら〝彼〟が力を貸してくれたのかもしれないね』

「……〝彼〟?」


『〝夢みる王子〟。…彼はいつも、君たちを見ているから』