ポタリと、ゆいちゃんの瞳から涙が零れ落ち真っ白い空間に光を放ちながら重なってゆく。
それは目の前にある扉と同じ、淡い光。

やがて涙の跡からその光は広がり、瞬いた。
視界が真っ白に眩む。


「ゆいちゃ……!」

「伝えて、うららちゃん。お兄ちゃんが、きっとうららちゃんを見つけてくれるから…もう、離れちゃだめだよ、待っている人が居るんだもん」


「ゆいちゃん、ゆいちゃんは…? きっとお兄ちゃんも、ゆいちゃんのこと待ってるよ…! 一緒に…一緒に戻ろう…っ お兄ちゃんのところに、帰ろう…!」


少しずつ、頭の記憶が整理されていくように、絡まっていた糸が解けるように。
それは鮮明に受かび上がった。


妹がいる、と言っていた──レオ先輩。
ゆいちゃんの〝お兄ちゃん〟は、きっとレオ先輩だ──


「だって、言ってた…! 大事なことは自分で伝えなきゃ、ダメなんだよ…!」


だけどゆいちゃんはふるふると小さく首を振った。
そして繋いでいた手が離れていき、温もりが消えていく。
体が扉の中へと、吸い込まれていく。


「いいの。大事だから、今伝えたいの。ゆいには今それができないから。だからゆいの言葉を、うららちゃんに託すの。もう、大丈夫だから…もう待ってなくていいよって、言ってあげて、ゆいの代わりに」


徐々にわたしの体が光に呑み込まれ、ゆいちゃんの姿が見えなくなる。
手を伸ばすのに、届かない。
もどかしくて悔しくて、涙が滲んだ。


「今度はゆいが、お兄ちゃんを呼ぶから…だからうららちゃんも──…」


そう言ってゆいちゃんは、出逢った時のように笑顔を見せた。

大きく手を振ったゆいちゃんの笑顔も姿も、光の向こうに消えていった。