――〝願いを叶える絵本〟が、わたしの為に作られた…?


北の魔女の言っている意味が、うららにはよくわからない。
理解できなかった。


「わたしの為、て…それって、どういう…」


戸惑うその手に思わず力が篭る。
その先に居るソラが、うららに視線を向け遠慮がちに口を開いた。


「うらら、それも忘れてしまったの?」

「……? なに、を?」


「あの絵本は…あの『オズの魔法使い』は、出版物ではなくて手作りの絵本。絵本作家だったうららのおばあさんが、うららの為に作ったもの。世界にひとつだけの、『オズの魔法使い』なんだよ」


――わたしの、おばあちゃん……?


「──……!」


瞬間、うららの目の前が白い光に包まれる。
それはうららだけを包む記憶の光だった。


──そうだ…思い、出した。わたしは、おばあちゃんと…大好きなおばあちゃんと、一緒に暮らしていたんだ。小さい頃からずっと、その絵本を読み聞かせられながら。


「うららの祖母、ヘレンは…愛を、願いを、希望を…そしてありったけの魔法を込めて、この絵本を作りました」


北の魔女はうららを見つめながら続ける。


「ヘレンはとても優しくて力のある、魔女だったのです」