「うらら!」『うらら!』


聞こえたのはレオとライオンの声。
ゆっくりすべてが遠くなる。

うららの足元だけ地面が裂け崩れ、落ちているのは自分だけなんだと認識できた時。
それにどこか安堵する自分が居た。


「ざけんな…っ うらら…!」


レオの腕が伸びた先に、うららの体は届かない。
うららはレオが差し伸べたその手をとろうとすらしなかった。

視界の彼方に落ちていく自分を冷たく見下ろす東の魔女の姿が映った。
ひどく冷たい眼差しで。


「思い出せないなら…銀の靴が手に入らないなら、他のヤツの手に渡る前に…消さなくちゃ。うらら、あなたが何も変わらないなら…変わろうとしないなら。ずっとそうやって都合の良い夢を見てればいいんだわ。──ひとりで」


なにも言えない。反論もできない。


──本当にわたしは弱くて、泣いてばかりで。いろんなものからただ、逃げていただけだったんだ。

──すべてを一度諦めたわたしだから、なんでもすぐに諦めて、手放して…目を逸らして耳を塞いでいた。逃げてばかりの、わたしだったから。だからソラはわたしに嘘をついた。

──ソラ。わかったの。ソラがわたしについていた〝嘘〟。ソラのやさしい嘘は、やっぱり弱いわたしを守る為の嘘だったのね。


自分のこの汚い弱さが大切な人すら巻き込んで傷つけるなら──こんな自分、要らないと。

あの時も自分は確かに、そう思ったんだ。