だからやっと振り返るうららについキツい物言いになってしまうのは、レオにとって仕方のないことだった。


「道、ホントにこっちで合ってんのかよ」

「……い、いちおう…」


「なんだよ一応って!」


思わず声を荒げると、うららはわずかに顔を強張らせてソラの影に隠れた。
その様子に眉間の皺が一層深くなる。


――…小動物かよ。


「レオー、道が悪いのはうーちゃんのせいじゃないんだからさーそんな今にも取って食われそうな顔ですごまれたら、こわいに決まってるでしょー」


相変わらずのんびりした口調のリオに隣りから突っ込まれて、レオは思わず舌打ちしてから視線を前に戻す。



森の中の小屋を後にして数時間。
うららとソラを先頭に、森の中の道を進む。

しかし進むにつれその道は、なんだかやたら足場が悪いというか、今までよりはるかに険しい道になっている気がしていた。

歩きづらいし、進みづらい。
今までは少なくとも普通の地面を歩いていた。

なのになぜか急に伸びた木の枝の間をくぐり抜けたり、腰まである草むらを、掻き分けながら進んだり、ぬかるむ道を歩いたり。
ただでさえ見えぬ道を進むしかないのに疲労感ばかりが蓄積される。

相変わらず薄暗い森は、鳥や獣の鳴き声ひとつしない。
頭上は鬱蒼と木々が茂り昼間だというのに日の光はほとんど届かず薄気味悪いことこの上ない。

行く道は険しく果てなく。

奇妙な森に迷い込んだような錯覚と途切れさせることのできない緊張感が、余計に足取りを重くさせた。

それでも今はこの道を、うららの後をついていくしかないのだ。