「うらら、僕にもずっと…聞こえていたんだよ」

「え…?」


「僕の名前を呼ぶ、うららの声が…ずっと、ちゃんと、僕に届いてた。その声が僕を導いてくれた」


ソラは小さく呟いて、まわした腕に力を込めた。


「鍵を、見つけたんだね」

「あ…、そう、なの…かかしと出逢ったあの家で、いつの間にかわたしのポケットに入っていて…きっと大事な場所の鍵なんだろうな、て。
だからわたしがちゃんとここに帰ってこれるようにソラがちゃんと、待っててくれるように…ソラに持っててほしかったの」

「──これのおかげで、帰ってこれた…」


ソラは手の平の中のうららが預けた鍵を見つめながら小さく呟いた。
だけどそれはあまりにも小さくて、うららはその言葉をきちんと受け止められなかった。


「ソラ…?」


ソラの胸元に押し付けられたままくぐもった声でうららが名前を呼ぶと、ようやくソラは腕の力を少しだけ緩めた。


「…まだ、どこか悪いの?本当にもう、へいき? なにか悪いものでも食べたの?」


質問を次々とぶつけるうららにソラは苦笑いを漏らして、安心させるようにさらりとその髪を撫でる。


「少し体調が優れなかっただけだよ。もう本当に、大丈夫」


言って落としたその笑みは、なぜだか泣きたくなるくらいに儚いものだった。