さっきの呉羽先生は前と違って基本的に優しかった。

 だからこそ、前のように上手く受け流すことなんか出来ない。


 前はセクハラしてくれば嫌だと思う心を抑えて演技できたけど、今はあの甘さに耐えるだけで精一杯だから……。


 だから尚更水梨先生が戻ってくることに期待していたんだけど……。



「そんなぁ……」

 情けない声をもらすと、流依がわたしの体を抱き上げるようにして立たせながら言った。


「心配するな、お前には俺がついてる。いざとなればあの先生の前から連れ出して一緒に逃げてやるから」

 力強い微笑みでわたしを見下ろす流依に、何だか安心する。


 何の保障もないのに、大丈夫なように思えた。