「あ、良かった。来てくれないんじゃないかと思ったよ」

 現場に着き、翔子先輩の姿を見つけると、彼の方もわたし達に気付いて近付いてきた。



 現場は関係者以外立ち入り禁止だったけど、翔子先輩が話を通してくれていたからすんなり入れた。



「すみません。ちょっと遅れてしまって……。でも良かった。まだ撮影始まってなかったんですね」


 そう言うと、翔子先輩は困ったような顔になる。


「それなんだけどね、ちょっと困ったことになってて――」


「翔! その子か? さっき言ってたのは」


 翔子先輩の言葉を遮って、奥のほうから誰かが近付いてきた。


 見ると、20代後半と思われる若い男性。

 容姿は並だけれど、意志の強い瞳が印象的だった。