コンコン その音にも返事をせず、わたしは覗き穴を覗き見る。 ドアの向こうには、一番会いたくない人……呉羽先生がいた――。 覗き穴から見えるその表情も、わたしにとって一番嫌な顔をしている。 楽しそうに目を細め笑っていた……。 わたしをどう料理しようか企んでいるかのように……。 コンコン そして三度目のノックの音が聞こえた。 わたしは息を殺してじっと動かない。 このまま、なんとかやり過ごさないと。 お願いだから諦めて自分の部屋に戻って!