受験生である私たちは、夏休みにも一定期間は学校へ通わねばならない。

夏休み特別講習だ。

この期間は他学年の生徒の授業がないため、朝から先生たちが門で待ち構えたりはしない。

淳一と顔を合わせることはないのだ。

よかったと思う反面、少し寂しくもある。

この特別講習は、進学校として毎年実績を出し続けている我が校のプライドを感じる、とても厳しいものである。

「今日のページ。やってきてない奴は正直に立て」

数人の生徒が素直に立つ。

「お前ら、そんなんじゃ志望校に受かんねーぞ。半年なんて瞬間的に過ぎる。この夏が勝負なんだよ!」

熱のこもった説教が響くのはうちのクラスだけではない。

冬の入試に向けて、この夏休みから本格的にエンジンをかけていくのが我が校の伝統だ。

講習が始まってから、授業が終わってからも構内で勉強する生徒が増えてきた。

友達同士で進路の話をするのも見かける。

みんな自分の将来と真剣に向き合き始めている。

それなのに私は、去年の夏のことばかり思い出しては物思いに耽り、将来のことなどまったく考えられずにいた。