「もっと安い物件、ないんですか?」



「うーんと、ね、1件だけ、ないこともないけど」



と言いながらパソコンを駆使し、物件の資料を印刷するおじさん。



しかし、書類を見てうんうん唸り始めた。



「いーよ、いわくつき物件でも。生きてる人間の方がよっぽど怖いしね。見して」



アタシはそんなおじさんから書類を取り上げる。



「月3万ちょい、2LDK。敷金も礼金もなし……なんでこんなに格安?」


こんなの、田舎にだって普通はない物件だ。



「そこはね、少し古いのと、既に人が住んでいるからだよ。言葉を借りるなら、幽霊より怖い、生きてる人間が」



おじさんが溜め息混じりに答える。



いや、生きてる人間が怖いってのは、言葉のあやで、実際怖くないんだけど。


ってか、人が住んでるなら、アタシは住めないじゃん。