―バタン!

『じゃあ俺は、ココで待ってる。
そこの自販で煙草買うから。』


「うん。
すぐ戻るから!」


『おー!
待ってるからな!』


店の裏口に車を停め、一緒に降りて、別々の方に足を運んだ。


笑顔で手を振って。


これが、隼人の最期の笑顔になるなんて、想像すらしなかった。






―ガチャ…

朝からデスクに向かっていたマネージャーは、あたしを見て目を丸くしていた。



『…酒井、風邪大丈夫か?
お前居なくて、大変だったんだぞ?
今日から出られるんだろ?』


戸惑いがちに言うマネージャーに、だけどあたしは頭を下げる。



「…マネージャー、今までありがとうございました。
さようなら。」


瞬間、マネージャーは目を見開いて。



『…お前…言ってる意味がわかんないんだけど…。』


「ホントにすいません。」


もぉ一度深々と頭を下げ、きびすを返した。




『待て!酒井―――!』


呼び止める声に、あたしが振り返ることはなかった。


後悔なんて、していない。


もぉ誰も、あたしを、あたし達を止められないんだ。



駆け足で店を出て、急いで傘を差した。


目の前には、煙草を買って戻ってくる隼人の姿―――…