もう…僕は幻覚と現実の差も分からない。

幻覚の中で、登喜子が

「そんなに急いでいかなくてもいいじゃない。静香も夜に来るんだし。」

と言ったんだ。

だから、そうかそれなら…と僕は出発しなかったんだ…。

…バルセロナって…どこにあるんだっけ…。

静香が来たはずなのに……静香に会っていない…。

登喜子は、病院に泊まり込む事になった。

夜中に無性に歌が歌いたくなる。

僕は一晩中歌った。

登喜子は簡易ベッドで寝ていた。