Darkness † Marker 5 【彷徨う者】


「どうしたの?」


「気、持ち…悪…」


慌てて手で口を押さえたが、堪え切れなかったようだ。

体を折ると、普通の人には見えない《闇》を苦しげな声とともに体内から吐き始める。

全身を震わせ、何度も何度も嘔吐を繰り返す。

不快なものに顔を顰めながらも彼が少年の背中をさすってやると、夥しい量の黒い靄が姿を現した。

行き所がなく、それはゆらゆらと目の前を漂い、再び裕一郎の中に戻ろうとする。

それを見た青年はわずかに眉根を寄せると、


「悪いけど、彼には触らせないよ」


言って右手を頭上に翳す。

チカリ。

闇に触れた接点が小さく煌めいた。

すると、一瞬にして靄は四散し辺りは晴れる。

全てを吐いた裕一郎は、またベンチにぐったりと横たわってしまった。

だが、戻してスッキリしたのだろう、その表情から険しさが引いていく。

青年は汗で張りついた前髪を、手で梳いてやった。

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