「どうしたの?」
「気、持ち…悪…」
慌てて手で口を押さえたが、堪え切れなかったようだ。
体を折ると、普通の人には見えない《闇》を苦しげな声とともに体内から吐き始める。
全身を震わせ、何度も何度も嘔吐を繰り返す。
不快なものに顔を顰めながらも彼が少年の背中をさすってやると、夥しい量の黒い靄が姿を現した。
行き所がなく、それはゆらゆらと目の前を漂い、再び裕一郎の中に戻ろうとする。
それを見た青年はわずかに眉根を寄せると、
「悪いけど、彼には触らせないよ」
言って右手を頭上に翳す。
チカリ。
闇に触れた接点が小さく煌めいた。
すると、一瞬にして靄は四散し辺りは晴れる。
全てを吐いた裕一郎は、またベンチにぐったりと横たわってしまった。
だが、戻してスッキリしたのだろう、その表情から険しさが引いていく。
青年は汗で張りついた前髪を、手で梳いてやった。
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