駅に戻ってきた裕一郎は、並ぶ人の列をすり抜けながら必死で尚人の姿を捜す。
だがそこへ運悪く電車が入ってきてしまった。
当然のようにホームは人の乗り降りでごった返し、彼の努力は無駄になる。
(もしかして帰ったのかな…)
影を追いかけていたとは言え、黙って駅を出てしまったのは裕一郎だ。
用事を済ませて戻ってきた尚人が、呆れて帰ってしまった可能性は大いに考えられる。
(やっぱり一言断ってから動けば良かった)
彼は後悔して、ガックリと肩を落とした。
「裕、お前待ち合わせの約束はしてなかったのか?」
余りの落胆ぶりに、河村は苦い表情を浮かべる。
「…うん。津久見さんがちょっと席を外した時に式が動いたから、伝言する余裕がなかったんだ」
「向こうも突然お前が消えたから、心配して捜してるのかもしれないぞ」
「だといいんだけど…こんな事なら携番、聞いておけば良かった」
はぁ…裕一郎はタメ息をついた。
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