「昨日、隣駅で気分が悪くなったオレに手を貸してくれたの、津久見さんだったんですね」
「あぁ、うん。その後、君の左指に勝手にその指輪を嵌めたのも、僕なんだ」
悪かったね…尚人は謝る。
「さすがに、これには驚きました…目が覚めたら身に覚えのないものが指にあったから。知り合いの人に見せたら《御守り》だって言われたんですけど、そうなんですか?」
「そう。摩利支天の御守りなんだって、それを作った本人は言ってたけど」
「津久見さんの知人の手作り…」
(へぇ…双瀬さんの言ってた事、当たってたんだ)
裕一郎はコッソリ彼の事を見直した。
「もしかして、その指輪も?」
「うん、僕のも」
尚人はニコリと笑った。
「左右全部?」
「それぞれ役目が違うらしいんだけど、オーバーだし邪魔になるから1つでいいって言ったら怒られた。僕の場合5つ揃ってないと意味ないんだって」
「きちんと意味があるんですね」
「そうだね」
裕一郎は自分の手元に視線を落とすと、ある事を思い出した。
「あ、そういえば1つ聞きたい事があるんですけど、これ…どうやったら外れるんですか?ちょっと学校にしていくのはマズイから…」
「…取れないの?」
裕一郎の言葉に、彼は不思議そうな表情を浮かべた。
「…津久見さんのは、外れるんですか?」
「普通に外れるよ」
そう言って、目の前で指輪を外してみせる。
(…見た目は似てるけど、オレのとは違うのかな…)
裕一郎の顔が小さく引きつった。
もう1度指輪を外してみようと試してみたが、やはり現状は変わらない。
「手、貸して」
尚人に言われ、彼は左手を出した。
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