「努力してみます。だから彼を離してあげて下さい…」
………
すると了解したのだろうか。
無言のまま、ふっと影はかき消えた。
それと同時、周囲のざわめきが戻ってくる。
さっきまで見ていたありきたりの光景が、目の前に広がっていた。
裕一郎はどうする事もできなかった自分に力が抜けて、ペタリと床に座り込んだ。
尚人は彼の隣に屈み込むと、顔を覗く。
「霊の声が聞こえた?」
「…はい」
「そう、良かった。ダメな事もあるけど、大抵はこうやって話しを聞くことくらいは出来るんだよ」
優しく言うと、尚人は少年の髪をくしゃりと撫でた。
「怖がらせてごめんね。でもこうでもしないと、君は本当に力を使いそうだったから…」
「いえ…オレの方こそ取り乱したりして、ごめんなさい」
まだ青ざめた顔の裕一郎は、俯いてギュッと目を瞑る。
「君はもう帰った方がいい。例のものは僕が探しておくから、心配しなくていいよ」
「…オレも、探します」
「無理をしても疲れるだけだよ」
「あの霊はオレに訴えてきたんです。オレが探して渡してあげないと、意味がない…そんな気がするんです」
「そう…裕一郎くんは、優しいね」
ふわりと微笑みかけると、彼の手を引いて立ち上がらせてやる。
(あれ…津久見さんの右手、指輪が…3つ!?)
自分の指輪とどこか似ていると、裕一郎は自分の物と見比べた。
.


