Darkness † Marker 5 【彷徨う者】

        ☆

土曜日の駅のホームは、中途半端な時間もあるがいつもより閑散としていた。

目に着くのは親子連れの姿が多く、社会人はパラパラと見える程度だ。

これではネバったとしても、裕一郎の目的の人物《指輪の主》は現れそうにない。

やはり平日の方が可能性はあるという事で、今日は諦めるしかなさそうだ。


「ここら辺でいいだろう。裕、式を放してみろ」


ホームの中央付近に来た時、河村が辺りを見回しながら指示する。


「…あ、うん」


河村に言われるまま、裕一郎は式蝶を駅のホームで放した。


ひらり、ひらり…
ひらり…


銀色の羽がゆっくりと、人の間をすり抜けて2人の元を離れていく。

「久司」

「追ってみよう」

裕一郎は頷くと、自分たちにしか見えない蝶の後をついて行った。


ひらり、ひらり
ひらり…


さほど移動することなく、ある場所で旋回を始める。


(やっぱりここ…?)


それはあの時、テレビに映っていた事故現場。

式蝶がレンズに映り込んでいた場所。

蝶は線路上に舞い降りた。


「久司、ここで何か感じる?」


事故現場と知らなければ、何も感じない…それくらい霊の気配はない。


「いや、不自然なくらい何も感じないな」


河村も首を傾げる。

昨日裕一郎を襲った霊の後を式に追わせた結果、蜘蛛もこの駅を示してきた。

蝶も同様にこの駅だと言っているようだが、足を運んでみれば気配すらないのだ。

転落防止柵から下を覗くと、昨日の今日という事もあって、まだ血の後が残っている。


「……」


(分からんな…どうなってる?)


下りて調べたい所だが、場所が場所だけにそうもいかない。

と、裕一郎は手を伸ばし、蝶を自分の元に呼び戻した。

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